性暴力について

事例ブログ

はじめに

 今回、平成19年に発生した強姦事件(現在の強制性交等罪)が無罪になったことで、裁判官が、被害に遭われた女性が『無理やり性行為をされたこと』を認めながらも被告を無罪にしているような判決が出たので、おかしいな、こんなことで良いのかなと疑問を感じました。

 そこで、こういう判決を裁判官が出した理由を、事件を担当した裁判官の言葉を交えて説明し、皆様の疑問を解決したいと思います。

概要

 令和3年3月15日に横浜地方裁判所川崎支部は、11年前に当時17歳の女性が強姦された事件について、被告に対して無罪判決(求刑懲役7年)を言い渡しました。

 その中で、江見健一裁判官は、被害に遭われた女性が被告から長期間にわたって重い性的虐待を受けていたことを認めて「苦痛が筆舌に尽くしがたいことは明らか」としながらも、起訴内容どおり日や場所で事件が起きたとするには『合理的な疑いが残る』と結論付けていました。

 事件は有ったと思うが、日にちと場所が絶対と言い切れないので罰しない、つまり『疑わしきは罰せず』ということです。

当時の事件概要

 被告は、被害に遭われた女性の母親と交際していたのですが、2010年(平成22)2月13日に、川崎市内の住宅で、女性に対して「お母さんを悲しませたいのか」などと脅し、無理やり性交したという内容での起訴でした。

 裁判で、検察側は、被害に遭われた女性の日記などをもとにして『被害事実を認定できる』と主張していました。

論点

  • 裁判官が説明した『合理的な疑いが残る』とは

 刑事事実の認定では、合理的な疑いを超える立証がされていることが必要とされていて、最決平成19.10.16は、その意義について『反対事実が存在する疑いを全く残さない場合をいうものではなく、抽象的な可能性としては反対事実が存在するとの疑いをいれる余地があっても、健全な社会常識に照らして、その疑いに合理性がないと一般的に判断される場合には、有罪認定を可能とする趣旨である』と説示して判例としての見解を明らかにしています。

  • 強姦罪や強制性交等罪の構成要件

 強姦罪や、法律が改正されて名称が変わった強制性交等罪には、暴行、脅迫、抗拒不能という要件が必要になります。

 条文に『暴行又は脅迫を用いて』と明記されている上、判例で、暴行又は脅迫の程度について『相手の反抗を著しく困難にする程度のものであれば足りる(抗拒不能)』とあるからです。

強制性交等罪(刑法第177条)

 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
 十三歳未満の者に対し、性交等した者も、同様とする。

 暴行、脅迫、抗拒不能といった要件を満たしていなければ、犯罪は成立しないということで、返せば、人ひとり(←被告)を処罰するにあたって『暴行、脅迫、抗拒不能があったと言い切れない』という状態であれば、裁判官は疑わしきは罰せずの原則で無罪にせざるを得ないということです。

疑わしきは罰せずの原則(疑わしきは被告人の有利に)

刑事訴訟法第336条
 被告事件が罪とならないとき、又は被告事件について犯罪の証明がないときは、判決で無罪の言渡をしなければならない。

まとめ

 防犯カメラなどがある場所で犯罪が行われたならともかく、バレにくい場所で行われたことを証明するって、すごく難しいですよね。

 捕まる気で犯罪をする人は少なそうですし。

 でも、これからも、このような無罪判決が出続ける可能性が極めて高いと思います。

 しかし、私は裁判官が悪いのではないと思います。

 法律が、被告人の人権を守るために、一般的な常識よりも高いハードルを設定しているからで、一般的な常識と法律の間とで、とても大きなギャップがあるからだと思います。

 おそらく、検察は、証拠が少ない中でも被害に遭われた女性のためにと、起訴をしたのでしょうが、今回の判決を受けて、裁判官が裁判の中で説明した『合理的な疑いが残る』という事実を補うだけの証明ができないと判断し、控訴しなかったのではないでしょうか。

 どんな犯罪に対しても、被害に遭わないことが一番だと思いますが、私は、こういった法律の知識が少しでも有るのと無いのとでは、物事の捉え方や、自分が被害に遭ったときはどうしたら良いのかが分かり取れる行動が変わってくると思っています。

 私は、悲しい思いをする方が少なくなるような、そして、悲しい思いをした方が救われるような記事が書きたいと思っています。

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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