スーパー分かりやすい『責任能力』

刑事訴訟法ノート

はじめに

 酷い方法で人を殺害した殺人事件があったときなどに捕まった犯人について責任能力があるのかというのがよく問題になります。

 そして、連日のようにネットやテレビで捕まった犯人の異常な精神について討論することが多くの場合だと思います。

 結論をいうと、裁判で責任能力が無い(心神喪失)と判断されれば、犯人は無罪になります。

 また、心神耗弱と判断されれば刑は軽減されます。

 そこで、今回は、責任能力について分かりやすくまとめました。

 このブログを読んでいただければ、どういう状況であれば無罪になるのか、また、刑が軽減されるのかについて分かります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

責任能力とは

 刑法における責任能力とは、刑法上の責任を負う能力のことです。

 ですから、責任能力のない者に対してはその行為を非難することができないという考え方なので、刑法は責任能力が無い者に刑罰を科しません

 精神障害があっても、是非弁別を弁識する能力その弁識に従って行動する能力があれば責任能力があると判断されます。

 しかし、どちらか一つでも能力を欠けば心神喪失どちらか一つでも能力が著しく減退していれば心神耗弱と判断されることになります。

 是非弁別を弁識する能力と、その弁識に従って行動する能力について、次の項目で分かりやすく説明します。

無罪などになるポイント

 物事の是非弁別を弁識する能力とは、自分が行おうとしている行動の是非を判断する能力のことをいいます。

 たとえば、これから自分が行おうとしている万引きが良いことか悪いことかが分かる能力が有るか無いかということです。

 その弁識に従って行動する能力とは、是非の判断に従って行動をコントロールする能力のことをいいます。

 たとえば、万引きが悪いことだと分かっていても、行動をコントロールできない状況であれば、無罪か刑が軽くなるということです。

 すべて、犯行時を基準とします。

 犯行時に責任能力が有るか無いかが争点ということです。

 逆説的になりますが、是非弁別を弁識する能力と、その弁識に従って行動する能力が完全にあれば、責任能力が有るということです。

無罪か、刑の減軽か

 責任能力が問題になって、無罪の判決が出るか刑の減軽判決が出るかは、心神喪失と判断されるか心神耗弱と判断されるかで変わります。

無罪になる場合

 無罪になる場合は、裁判で心神喪失と判断されたときです。 

 心神喪失とは、精神の障害等の事由により事の是非善悪を弁識する能力又はそれに従って行動する能力が失われた状態をいいます。

 失われた、つまり、無い状態です。

 心神喪失状態では、責任を追及することができないため、裁判で無罪の判決が下ります。

刑が軽減される場合

 刑が軽減される場合は、裁判で心神耗弱と判断されたときです。

 心神耗弱とは、精神の障害等の事由により事の是非善悪を弁識する能力又はそれに従って行動する能力が著しく減退している状態をいいます。

 著しく減退している、つまり、とても少ない状態です。

 心神耗弱状態では刑が減軽されることになります。

心神喪失や心神耗弱の判断材料

 まずは、精神障害が有るか無いかです。

 精神障害とは、永続的なものだけでなく、一時的なものでも該当します。

 ですから、酒に酔って酩酊していても該当することになります。

 たとえば、統合失調症、躁うつ病、てんかん、認知症、アルコール中毒などという精神病です。

 このほか、知的障害、異常人格や性格異常、酩酊、ヒステリーなどという精神障害も判断材料になります。

精神障害などの程度の判断基準

 では、どういったもので心神喪失や心神耗弱を判断していくのかを書きます。

 1つ目、動機は明らかか。

 動機について「訳がわからない」となれば、責任能力が無いと判断される可能性が高くなります。

 2つ目、計画的か。

 犯行が計画的であれば責任能力があると判断される可能性が高くなります。

 3つ目、違法性の認識があるか。

 自分がやったことは悪いことだと分かっている場合は、責任能力があると判断される可能性が高くなります。

 4つ目、自分の精神状態を理解していたか。

 5つ目、無罪になったり、刑が軽くなる可能性を分かっていたか。

 6つ目、証拠隠滅をしたか。

 証拠隠滅をしていた場合は、責任能力があると判断される可能性が高くなります。

心神喪失や心神耗弱を判断するとき

 その犯行当時に病気を患っていたからといって、そのことだけで直ぐに心神喪失の状態にあったと判断されるものではありません。

 その責任能力の有無や程度は、犯行当時の病状、犯行前の生活状態、犯行の動機や態様等を総合して判定すべきであるとされています。

 ちなみに、過去の裁判事例を探してみましたが、心神喪失と認定されるのは極めて稀でした。

おわりに

 今回は、責任能力について説明しました。

 改めて説明すると、裁判で責任能力が無い(心神喪失)と判断されれば、犯人は無罪になり、心神耗弱と判断されれば刑は軽減されます。

 ですから、酷い方法で人を殺害した殺人事件があったときなどに、捕まった犯人について責任能力があるのかというのが、どうしても問題として取り上げられやすいです。

 そして、責任能力の判断基準などが一般的ではないからこそ、また、常識では考えられないような判決がでる裁判だからこそ、どんな判決が出るんだろうと心配になるんだと思います。

 今回のブログが『裁判でどういう判断がされるんだろう』という皆様の心配や悩みを解決する一助になれば、本当にうれしいです。

 また、皆様にとって良い情報をまき散らしたいと考えているので、今後とも、よろしくお願いいたします。


 

コメント

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